【自民は反対・広域一元化条例案可決】
3月26日大阪市会本会議にて、予算案などと合わせて議決案件となった、いわゆる広域一元化条例。
結果としては、維新・公明の賛成で、修正案が附帯決議をふした上で賛成可決となった。
自民会派としては、川嶋広稔議員から反対討論を行いました。
討論の全文は下記の通りとなります。
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私は、自由民主党・市民クラブ 大阪市会議員団を代表し、ただい ま議題となっております議案第99号に対して「反対」の立場から 討論をいたします。
いわゆる一元化条例案と言われる本条例案については、「大阪市廃 止・特別区設置住民投票」において反対多数で否決された直後、市 長から、広域一元化を望む声が多かったと「民意の都合の良い切り 取り」によって検討が始められたものであります。
そもそも、直接民主主義による住民投票において、投票の結果1票 でも多い方が民意となります。住民投票によって示された民意は、 単に政令指定都市大阪市を残すということだけではなく、事務分担 や財源調整などの具体的な内容が書かれていた「特別区設置協定 書」の中身が否定されたものでありますので、大阪市の権限と財源 を大阪府に移譲することによって「毀損させる」ことも認めないと いうものであります。
究極の民主主義、直接民主主義によって示された民意に従うのが、 政治の責任です。我々は、住民投票という究極の民主主義の結果に 従って、政令指定都市・大阪市の権限と財源を活かして、大都市圏 における母都市としての機能を果たし、大阪の発展に貢献するとと
もに、基礎自治体として市民生活の向上と発展に寄与すべき取組を 進めていく責任があります。
さて、本条例案は、成長戦略と都市計画の2分野に関わる大阪市の 事務について、大阪市から大阪府に事務を委託することによって、 その権限を大阪府に一元化するという方針を定めたものでありま す。しかし、今回の条例制定による「意義」や「効果」について は、具体的な説明がされておらず、そもそも立法事実についても、 質疑の中で、妥当と判断できるようなものが明確に示されることが ありませんでした。
以上のことを踏まえ、以下に本条例案の問題点について主なものを 7点、指摘申し上げます。
まず1点目は、地方分権の流れに逆行するということです。
2000 年に地方分権一括法が施行され、「日本国憲法の国民主権の理 念の下に、住民に身近な行政は、地方公共団体が自主的かつ総合的 に広く担うようにするとともに、地域住民が自らの判断と責任にお いて地域の諸課題に取り組むことができるようにする」ために国か ら都道府県へ、都道府県から市町村へと権限の移譲が進められてき ました。
しかしながら、今回の条例は、都市計画決定権などの権限を大阪市 から大阪府へと「より住民から遠ざける」こととなっており、地方 分権の大きな流れに逆行することになっています。このことをまず 指摘しておきます。
2点目は、 二重行政問題などに関して定義づけもなく、立法事実についても正 しく検証・分析されていない状況にあるという点です。
条例によって二重行政が解消されると謳っていますが、そもそも 「二重行政」の定義も規定されていなければ、条例制定により解消 される「二重行政」の具体的な説明もありませんでした。
第 30 次地方制度調査会 第 14 回専門小委員会において、二重行政 の定義として「重複型」「分担型」「関与型」との3つの類型が示 されていますが、本来は、この類型に基づいた二重行政についての 検証・分析がされるべきです。
立法事実については、例えば、WTC とりんくうゲートタワーといっ た二重行政と関係のないものを、「二重行政の結果、高さ争いが生 じ、その結果破綻した」かの如く喧伝し、「二重行政の弊害」と誤 った誘導を行い、条例制定の根拠としています。
そもそも、当時の社会情勢や経済情勢について、例えば、バブル経 済の時期であったこと、さらには、日米貿易摩擦のことや、その結 果、日米構造協議により内需拡大が押し進めらたという経済状況、 NTT などの株式上場による資金などを活用した国の政策による「民 活法」の推進など、その要因分析・検証が全くされないまま「二重 行政の弊害」とされていることは、根本的な問題であります。
よって定義すらない「二重行政」の解消を根拠としている点、本条 例を制定する立法事実は存在しない点を指摘しておきます。
3点目は、 先の「二重行政」と言われるものとの関連もありますが、条例によ って大阪市から大阪府に事務委託される都市計画決定権限について も、条例の制定によって、どういう効果があるのかなど具体的な立 法事実が示されず、結局は時代に逆行し、大阪だけ「過去に戻す」 ことになるという点です。
大阪市から大阪府に事務委託されようとしている都市計画決定権限 に関しては、都市再生特別地区に関する権限以外は、2000 年の地方 分権一括法制定前は大阪府にその権限があり、2000 年以降、段階的 に大阪府から大阪市に権限移譲されています。1980 年、1990 年代 のバブル期には大阪市には、その都市計画権限はありませんでし た。何を持って今回の事務委託が「過去の二重行政」を解消するこ とにつながるのか、疑問であります。
例えば、阪神高速道路淀川左岸線延伸部に関しては、「2001 年〜 2011 年まで」の期間については、「検討段階にとどまり、事業着手 に至らず」と言われ、そのことがまるで「大阪市と大阪府が仲が悪 かった」かのように主張をされていますが、「2001 年〜2011 年」 の時期には、当該の都市計画決定権は大阪市にはなく、大阪府にあ りました。
また、なにわ筋線に関しては、「事業スキームや府市含めた費用負 担等が課題となり、事業化ができなかった」ということで大阪市と 大阪府が仲が悪くて実現できなかった訳でもない。近年になって 「なにわ筋線」が急に進んだ要因については、「うめきた2期開発 が動き出すとともに、JR東海道線支線の地下化、新駅設置が事業 化されて、(仮称)うめきた新駅からJR難波駅及び南海なんば駅 を結ぶ路線として収支採算性が確保できるスキームの目途がたった こと」、および「インバウンドが急増するなど社会情勢の変化から 実現に向けた機運が高まったこと」などと答弁もありました。
この点においても、二重行政の解消を根拠とする本条例の制定に繋 がる立法事実は存在しません。さらには都市計画決定権について大 阪市から大阪府へ事務委託することによって、結局は時代に逆行 し、大阪だけ「過去に戻す」ことになると申し上げておきます。
4点目は、非常に懸念されるのですが、都市再生特別地区に関する都市計画決 定権限が、大阪府へ事務委託されることにより、新たな二重行政が 生み出され、ひいては成長のブレーキになってしまうという点で す。
都市再生特別地区は、2002 年に制定された都市再生特別措置法に基 づいて創設された都市計画法による地域地区の一つであります。 2002 年の制定時から、その都市計画決定の権限は政令指定都市の権 限となっています。
都市再生特別地区の都市計画決定権が大阪市にあるために、都市再 生特別地区において開発を行う事業者にとっては、地区計画の都市 計画、環境アセスメントや開発許可に関する協議はもちろんのこ と、さらには道路管理者として、あるいは公園などの管理者である 大阪市との協議も必要となります。大阪市が総合的かつ効果的なま ちづくりを一元的に行うための協議の窓口を担ってきましたが、こ の窓口が大阪府と大阪市に分かれることで、事業者から見た場合に は協議に関して「新たな二重行政」が生まれることになります。結 果、非効率になり、協議に時間がかかるとともに、様々な負担が発 生するのでは、と開発事業者から懸念が示されています。
この点について、ワンストップ窓口を設置して事業者の負担軽減を 図るとしているが、事務委託しなければ余計な手間を増やすことも なく、本末転倒も甚だしいと申し上げておきます。
都市再生特別地区の都市計画決定権を大阪府に移管することによる 弊害から、事業者の大阪への投資意欲が減退することも想定され、 それこそ大阪の成長のブレーキになりかねません。
5点目は、 条例において、大阪府と大阪市が対等の関係にあるのか疑問がある ということです。
昨日の本会議で本条例の修正案が上程されましたが、その中に大阪 府と大阪市は「対等」という文言をわざわざ入れる修正がおこなわ れました。また、この後に付けられる附帯決議案においても、大阪 府と大阪市は対等の立場で」と書かれていますが、条例の修正案に 「対等」との記載があるにもかかわらず、附帯決議でも記載しない といけないくらい、条例の運用にあたっては、対等性が失われるこ とを危惧しているのではないかと捉えざるを得ません。
そもそも、事務委託をした権限については、大阪市がその権限を失 うのみならず、財政的な負担とリスクだけを、引き続き負うことに なるのですから、対等とは言えない関係になります。
さらには、この条例に基づいて今後は「規約」が定められることに なります。規約に関しては、府市両議会で可決されると、その後、
仮に大阪市会で廃止されたとしても、府議会の同意がなければ、規 約は廃止できません。まるで幕末の不平等条約のようなものです。
次の市長選挙で条例並びに規約の廃止を訴える市長候補者が当選 し、市会の賛同を得て、規約を廃止できたとしても、府議会の同意 が得られなければ、事務委託の規約は廃止できず、まさに「民意」 を踏みにじる可能性もあります。そのことを指摘しておきます。
6点目は、大阪府の「責任」についてであります。
この条例によって、大阪府が大阪市内に対して今まで以上に「責 任」を持つことになるとの答弁がありました。その「責任」とは、 一体何なのでしょうか。大阪府が今まで以上に財政的に「新たな」 負担・拠出をするということなのでしょうか。
もし、今まで以上に、大阪府が財政的な負担をする覚悟があるのな ら、今、明確に示すべきです。
現在、大阪府と大阪市の間で連携が取られていることで、「市域内 の事業であっても、府も財源負担を行なっている」との答弁があり ました。しかしこれは、平成 27 年に大阪府・大阪市において知 事・市長名で締結された覚書「先行的に取組む広域的な新規・拡充 事業について」に基づく、宝くじ収益金の配分見直しによって、大
阪市から大阪府に宝くじ財源の収益金が 20 億円移譲され、その財 源を元にして大阪府が財政負担を行なってるものです。
地方自治法には、府県の仕事として「広域」「補完」「調整連絡」 ということが書かれていますが、大阪府は、この条例がなければ 「補完」「広域」「調整連絡」の責任を果たさないということなの でしょうか。そんなことは無いと思います。
市長はよく「市民は府民だ」と言われます。大阪市民は市民税のみ ならず大阪府税を納めているれっきとした大阪府民でもあります。 この条例がなくても、府県の本来の役割に則って「大阪府税」によ って、事務委託しようとする権限に関する財政的な負担とリスクを しっかりと負うべきであります。
7点目は、大阪市の「自治」についてであります。
自治の原則は、「自己決定・自己責任の原則」にあります。今回の 条例によって自己決定権のうち条例に定められた権限について大阪 府に事務委託されることになりますが、財政負担などのリスクは大 阪市民が負うことになります。これは明らかに「自治権(自己決定 権)」の放棄であります。
その他、まだまだ多くの問題点がありますが、時間の関係上、この 程度としておきます。
最後に、委員会質疑の中でも申し上げた「広域行政への提案」につ いて申し上げます。
平成 26 年の総務省「経済センサスと統計地図(大都市圏の売 上)」、平成 27 年の国勢調査をもとに作成された総務省「通勤・ 通学 10%圏」の資料を示させていただき、経済の集積、昼間人口の 集積を鑑みれば、大阪市を母都市とする経済圏はすでに「大阪府 域」を超え、京阪神に広がっていることを申し上げ、「広域」とい う観点が重要であり、大阪府域という「狭いエリア」で考えるべき ではないと指摘いたしました。
先ほど来、何度も申し上げていますが、地方自治法にある通り、広 域自治体である大阪府の本来の役割は、府域内における「広域」 「連絡調整」「補完」の3つの機能であります。大阪府域を越える 「大都市圏」を視野に入れ、府県の境界を超え、隣接する自治体と の連絡調整こそが新たに果たすべき機能、役割であると考えます。
統治機構改革を目指すというのなら、関西広域連合を発展・強化す るなど、府県のあり方そのものを改革すべきです。要は、今の広域 行政に係る問題は、政令指定都市と府県の間にある問題ではなく、 明らかに「府県制度の限界」に起因するものではないでしょうか。 そのことに、しっかりと目を向けて改革を進めていくべきでありま す。
以上、縷々申し上げましたが、
二度の住民投票で示された大阪市民の民意を無視していること、地 方分権の流れに逆行するものであるとともに、明確な立法事実が示 されていないどころか、新たな二重行政を生み出し大阪の成長にブ レーキをかける可能性があること、大阪市の自治権の放棄と言える 行為である等々の理由から、本条例案に対して、明確に反対するこ とを申し上げ、反対討論といたします。
ご静聴ありがとうございました。