【市立高校を大阪府に移管する問題点】

広報 議会報告

【市立高校を大阪府に移管する問題点】
12月9日の大阪市会本会議。重要な案件である『議案第182号
大阪市立学校設置条例の一部を改正する条例案』について太田晶也(福島区)議員が反対討論を行いました。
残念ながら結果としては、維新・公明による賛成可決となりました。是非とも、自民市議団の討論の内容を確認頂き、本議案に対する様々な課題について、市民の皆様と認識を共有させて頂きたい。
討論全文は下記より
☟☟☟
私は自由民主党・市民クラブ大阪市会議員団を代表いたしまして、議案第182号 大阪市立高校設置条例の一部を改正する条例案について、反対の立場から討論いたします。
11月1日の住民投票で大阪市廃止・特別区設置が否決され、大阪市の存続が決定したにもかかわらず、大阪市立高校が廃止され、大阪府へ移管させるという今回の条例案は、単なる政治目的だけで立案されたものであり、その内容について、本日まで理事者からは、何ら納得のできる説明と回答は得られませんでした。
そこで、われわれ自由民主党・市民クラブ大阪市会議員団からは、反対の理由として大きく3点(①教育内容などについて②土地の無償譲渡について③法令上の問題点について)を申し上げます。
①まず 1点目は、大阪府に移管することによって、大阪市として特色のあった教育内容や、サービスが失われてしまう点であります。
市立高校の特色は、商業・工業など専門学科を中心に、卒業後は社会の即戦力となるよう人材の育成に取り組んできたことです。市立の工業高校は、電気や機械など専門的な学習を一年時から学ぶ。一方、府立の工科高校は、一年次は総合的な専門学習を学び、二年時から電気や機械など、専門的な学習に取り組んでいくという違いがあります。
受験生は工業系高校を選ぶ際に、市立・府立の違いを含め、自分のスタイルに合った専門学習を学べる高校を選択できるメリットがあります。子どもたちのニーズは多様化しており、その選択肢が広がることはメリットです。府立にノウハウがある云々とは何ら関係はありません。また、商業系学校は府立高校には無いばかりか、淀商業高校の福祉学科についても府には何のノウハウもありません。さらには工芸高校のような美術やデザインに特化した高校、泉尾工業のようにファッションやセラミックが学べる学校もありますが、今回の条例案は、そうした各校でこれまで育まれてきた特色を、乱暴に無視するものです。
少子化が進み、技術者、クリエーター、介護職など、今後ますます担い手不足と人材不足の問題が顕著となってきます。
大阪市立高校が募集定員を減らしてでも学校と学科を守ってきたのには、こういった経緯があります。
にもかかわらず、府立高校では定員割れが3年連続となると、学校再編がされる、いわゆる3年ルールが学校減らしのためにすすめられているという話を聞きます。
大阪市立高校は、府立の普通科と一緒にしては絶対にいけないのです。
また、市長は大阪府立高校が135校あり、大阪市立では得られない「ノウハウ」があると言うものの、それは数的理由だけであります。大阪市立高校は21校有り、全国の市立高校の中では一番多く、二位の名古屋市の14校、三位の横浜市、京都市、神戸市は同数の9校です。政令市20市の中で、相模原市以外の19市に市立高校があります。府立の135校にスケールメリットがあり、大阪市立の21校にはスケールメリットが無いというのは全く理由にはなりません。
数的理由を挙げるのなら、たとえば私立の場合、ほとんどの高校は1校だけの学校法人です。姉妹校があっても2校、3校程度です。
私立高校にはノウハウが無いという事なのでしょうか。こんな乱暴な理論は、はたして理由になりうるでしょうか。
次に、府は高校、市は小中学校を担い、それぞれ役割を集中させるべきだとの答弁がありましたが、一見それらしく聞こえるものの、その理由には、さらに根拠がありません。
府に移管される「咲くやこのはな」と「水都国際」は中高一貫校であり、中学校があります。小中学校を大阪市で集中させるというのは明らかに詭弁でしかありません
市長はこれまで市立高校に出向いたことがなく、生徒や卒業生、教職員と移管について話し合いをされた訳でもないとのことでした。
この間の委員会質疑でも、市長の答弁について、何となく趣旨は理解できるものの、結局話は最後まで噛み合わず、唯一理解できたのは、子どもの「重大な虐待をゼロ」にしたいという思いだけ
でした。
この議案の先には、何千人、何万人という生徒や卒業生、教職員などの関係者がいるのです。さらに、政令市大阪市の存続が決まった今、この議案は今議会で決着をつけなくても、1年、2年課題を整理しながら、じっくりと解決をしていくべきです。松井大阪市長にはその責任が問われています。
百歩譲って、しっかりと議論をしたうえで大阪市立の普通科高校だけを府立に移管するというのなら、考えられなくもありません。
しかし、この議案で、21校の大阪市立高校と、2校の中学校を府に移管させるのは、教育の目的ではなく、大阪市廃止構想で生まれた、政治目的であると言わざるを得ません。
②次に2点目です。移管される際の、土地の無償譲渡についてであります。
無償譲渡については市の財産条例では「特に無償とする必要がある場合に限り」と条件を付しています。
高校移管での土地は、路線価ベースで1275億円です。
かつて、大阪安全基盤研究所の場合、土地代を巡って、当初予算は路線価ベースで12.7憶円でしたが、結局、不動産鑑定評価額は29.6憶円となり、府に追加で16.9億円も負担させら
れました。
仮にこれが高校移管でも同じようなことがあったとすれば、大阪市民の資産がおよそ3000億円も奪われることになります。
これまで大阪市教育委員会は無償譲渡の必要性について、「安定的な運営を行い、子どもの教育環境を充実させるため」、また「学校運営者が自ら資産を所有し、一体的に管理できるため」、さらに「学校の土地建物においてトラブルが発生した場合の調整を、煩雑にさせないため」と説明されました。
しかし、実際に大阪市立学校には27校に借地があり、枚方にある市立高校では、これまで80年の歴史で一度も、その借地でトラブルはありませんでした。
さらに驚くべきことに、水都国際中高一貫校の設置の際に検討した、元府立咲洲高校の跡地では、何と大阪府からは財政が厳しいからとの理由で、有償で貸与という提示がされました。
府の理屈は、自分たちの土地は有償で貸与するものであるが、大阪市の土地は無償で譲渡せよというものであり、笑止千万、まさに奇天烈。大阪市の財産を奪うだけが目的で、ありえない話であります。
③最後に3点目についてです。
会派として市立高校等を大阪府に無償譲渡するにあたり、法令上の問題点の有無について、専門家に確認を行ったところ、違法の可能性について指摘されました。
以下、この点について述べさせて頂きます。
普通地方公共団体の財産の処分については、地方自治法237条2項で「条例又は議会の議決による場合でなければ、(一部省略)適正な対価なくしてこれを譲渡してはならない」旨規定されています。 
その規制の趣旨について、最高裁判例は「適正な対価によらずに普通地方公共団体の財産の譲与等を行うことを無制限に許すと、当該普通地方公共団体に多大な損失が生ずるおそれがあるのみな
らず、特定の者の利益のために財政の運営がゆがめられるおそれもある」と述べています。
また、本議案の無償譲渡の根拠規定である大阪市財産条例16条は、普通財産を公用又は公共用に供するため、国又は公法人に譲与することができる旨定めていますが、昭和39年の制定当時、大阪市は、先ほど触れた地方自治法237条2項の趣旨に鑑み、旧自治省の示す、条例準則よりも厳しい要件として「特に無償とする必要がある場合に限り」との文言を追加で規定し、厳格な姿勢を求
める条項としているところです。
しかしながら、本件無償譲渡を実施する目的について、「なぜ、本件行政財産を無償で譲渡を行うのか」、「譲渡によって大阪市及び大阪市民が得られる利益は何なのか」、「台帳価格約1500億
の損失を補うものは何なのか」について客観的な根拠が説明されておらず、「特に無償とする必要がある場合に限り」という財産条例16条の要件を満たしていません。
専門家からは、この点において、本議案は違法となる可能性がある旨、指摘されています。
また学校教育法5条には「学校の設置者は、その設置する学校を管理し、法令に特別の定めのある場合を除いては、その学校の経費を負担する」と定められています。また、高校の建設費・取得費
等に関する都道府県と市町村の負担の関係、地方公共団体相互間における経費の負担の関係については、地方財政法27条及び28条の2に規定されています。
本件譲渡後の土地建物は、府立高校として利用される予定であり、学校教育法5条に基づき、土地建物の取得費用については、本来大阪府が負担しなければならないところ、大阪市が負担するものです。
この点、台帳価格(路線価ベース)にして、およそ1500億円もの市有財産が無償譲渡されることは、大阪市の地方財政の健全性を害するおそれがあるとともに、地方公共団体相互間の経費の負担
区分を乱すものです。
さらに本件譲渡は、市を構成する市民の大多数が納得できる「自発的」な譲渡と認められる客観的かつ合理的な理由も認められません。
このことから、府立高校として利用する土地建物の取得費用を含む府立高校の経費は本来、大阪府が負担すべきものであるため、地方財政法27条及び28条の2並びに学校教育法5条に違反する可能
性が指摘されているものです。
以上のことからすれば、本件譲渡は、市財産条例16条に定める「特に無償とする必要がある場合」の要件を満たさず、違法である可能性があるほか、地方財政法27条及び28条の2並びに学校教育
法5条に違反する可能性があるため、本議案に反対するものであります。
以上、縷々申し上げましたが、大阪市立高校設置条例の一部を改正する条例案については反対であると申し上げます。
議員各位の良識あるご判断をお願いし、反対討論とさせていただきます。
   *************************
討論のポイントを太田議員より動画にてコメントさせて頂いております。

(写真は、太田議員の討論と合わせて、加藤建設港湾委員長・花岡民生保健委員長の委員会報告の登壇場面を掲載しています。)

関連記事