【大阪市の「水」の未来】
山本長助議員(港区)
大阪市における水道事業の中での管路更新事業にコンセッション制度(まとめて丸ごと長期民間委託)を導入する議案に対して、自民は反対を致しました。
令和2年度予算に合わせての議案で、3月26日の本会議において議決。最終的には賛成多数の結果となりました。
本会議での山本長助議員(港区)からの反対討論の全文を掲載致します。老朽化した管路更新を早期に進めることは重要です。しかし、その後が見えない中で、決めてしまって良い事なのでしょうか。民間委託期間が終了する16年後に、大阪市が存在するかも分からないという現状が、中長期的な判断を止めてしまう要因になってしまっています。
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私は自由民主党市民クラブを代表して、議案第85号、大阪市水道管路更新事業に係る実施方針に関する条例案、及び、議案第86号、大阪市工業用水道施設運営事業に係る実施方針に関する条例案に対して、反対の立場から討論をさせて頂きます。
これらの議案は、水道事業及び工業用水道事業について、いわゆるコンセッション制度を導入し、水道事業については管路更新事業を、工業用水道事業については運営全般を、改正水道法及びPFI法に基づき、民間事業者に大きな裁量を与えて事業を委ねていこう、とするものであります。
水道の管路更新事業へコンセッションを導入する趣旨・目的として、老朽化した管路の更新、耐震化の促進、また、収益力や効率性を高め、経営の持続性を将来にわたり確保していく点については、否定するものではありません。
しかし、わが国において、上水・工水両事業にコンセッション制度を導入した先行事例がない中、制度導入によるメリットばかりに着目するのではなく、制度面から起こりうるであろうリスクについても、もっと慎重に見極めていく必要があります。
以下、反対の理由を4点申し上げます。
一点目ですが、本市では、平成29年4月に民間の施工業者による、配水管工事の不適正施工が多数発覚し、大きな社会問題となりました。これについては、昨年3月、報告書が出されましたが、局として再発防止策を講じたばかりで、充分な効果検証を経ていません。配水管工事の設計から施工管理までを、一括して民間にゆだねることによって、行政のチェック、議会のチェックがされなくなり、不適正施工を本当に防止できるのか疑問を感じます。
二点目についてですが、配水管更新ペースは、16年の事業期間中は現行の2倍程度に引き上げられますが、事業終了後は、現行と同程度の年間60kmから70kmとなります。その場合、毎年60kmから70kmの管路更新を直営に戻すのかについては、まだ決まっていないとのことでした。
民間事業者に16年間任す事を進めるのであれば、本来、16年後を直営に戻すのか、どうするのか決められたうえで進められるべきであり、あまりにもいい加減と言わざるを得ません。
三点目ですが、新型コロナウィルスによる感染拡大に伴う経済面での影響です。
新型コロナウィルスの終息が見通せない中、経済活動が縮小している状況下で、一社もしくは数社で、市内全体の管路更新を独占的に担う仕組みでは、一気に市内の工事業者の寡占化を招く恐れがあります。
国は、新型コロナウィルス対策でリーマンショック以上と位置づけ、様々な経済対策を打ち出しています。
寡占化を招く今回の両議案は、国の新型コロナウィルス対策とも整合性がなく、中小零細の管工事関連の事業者を却って苦しめる結果になるのではないでしょうか。
工業用水道にしても、今後利用者が減ることを見込んでの運営権制度の導入ですが、経済情勢が想定以上に悪化し、企業の倒産などが発生した場合、利用者数が減少し残った企業が価格転嫁のリスクを負うことになれば、本末転倒となりかねません。
こんな時だからこそ、公が責任を持たなければなりません。
また、両議案とも理事者の説明では、財政支出効果として、全体の1割前後の費用削減効果(いわゆるVFM)しかありませんでした。
現在の新型コロナウィルスが拡大している状況を考えれば、さらに水需要が下がる可能性も高く、削減効果が発現しないことも想定されます。
四点目として、本件は大都市制度の議論との関連から考えられるリスクです。
今回の議案に対して、理事者からはコンセッション導入後も、料金は条例で規定されるため、見直す場合は、市議会の議決が必要である、すなわち、議会のガバナンスが働くとの説明を受けました。
しかし、仮に、大阪市が廃止され、特別区が設置された場合、水道局は府の部局として移管されることとなります。そうなれば、市民の立場、意見を代表する大阪市会の判断ではなく、880万人の府民のうち、水道を利用していない600万人の府民の代表が全体の約2/3を構成する府議会によって判断されることになり、料金は市民の代表の議会で決めるから大丈夫という議論の前提が大きく変わってしまいます。
以上の理由から、市民にとってのライフラインである水を守る観点からも、再考すべきであり、
両議案に対して、改めて、「反対」と申し上げます。
以上縷々申し上げましたが、
議員各位には良識ある正しい判断が下されることを祈念し、私の反対討論とさせて頂きます。
ご清聴ありがとうございました。